UP2000.4



ここに収録した「栄村十景」は、第二次世界大戦の終戦を受け、民主主義国家建設の途上にある昭和25年、茨城県つくば市の前身、栄村の地域の風情を描き留めたものです。
 当時、栄村は数ある農村の中で、文化行政に力点がおかれ、中でも公民館活動が積極的に展開されました。その広報誌として、当時としては破格の体裁がとられ、孔版刷りのA5版24ページにも及ぶものでした。内容的には民主主義とはという、今日ではごく常識的に考えることであっても、戦前、戦中の皇国主義からの脱却化にある渦中を考えるとき、村民への民主化教育の重要性がひしと伝わるものが印象的です。
 さて、その広報誌の初期の表紙を飾った表紙絵がここに紹介する「栄村十景」であります。そして、その作家は日本芸術院会員、故浦田正夫氏であります。浦田氏は明治43年熊本に生まれ、上京後の戦中、土浦市虫掛の柴沼醤油の大旦那との交友をたよりに、旧藤沢村に疎開し、さらに昭和24年旧栄村上境に居をもちました。作家活動のかたわら、地元の学校で教鞭をとるなど、文化教育の一端を担った一人でもあります。そして、この十景の紹介が終わる頃、土浦への転居を経てふたたび上京し、今日まで日本を代表する日本画家として活躍しておられました。
 平成9年11月30日、いばらき賞授賞式まであと数日という中、他界されました。
 ここに氏の壮年期の作品としての紹介と、そこに描かれた私たちの愛する郷土の豊かな風景に思いをはせ、作品集として収録をはかったものです。
 なお、原画については今持って消息不明で惜しまれます。また、紹介文と歌は郷土の歌人故大久保月夜氏らが情感たっぷりに歌いあげました。ご堪能ください。


    

    

    

    

    

番外11景


作者、浦田正夫氏プロフィール