つくば田園文化センター設立主旨(案)

 20世紀後半の文明を象徴する情報化社会は、確かに個人的な分野に至るまで知的な情報の交流という意味で、豊かな社会を実現したということは否定出来ない事実である。
 その反面、知的な情報を得ることだけに興味が偏重し、モノを生み出し、育てるという実生活・実体験が不足し、知識と現実とが遊離した変則的な人々を生み出していることも、子供から大人に至るまで認められるところである。
 このような仮想現実的知識を助長するような生活観を放置すると、本来の心身共にバランスのとれた人間的な暮しを破壊し、ひ弱な生活者集団を形成する方向に今後の社会は傾いて行くものとおもわれる。
 つくば田園は、「つくば」という田園的でありかつ都会的であるという環境の長所を生かし、子供達から高齢者にいたる、つくば地域の住居者および他の地域の住居者を対象に、知識と自然とを実体験を通じて一致させることが出来る、健康で創造的な田園生活体験の場を提供することを、その活動の目的としている。


                        2000・08・02・
                        原案作成  平 不二夫
(筑波大学名誉教授)




    (仮称)つくば田園文化の設立について

●発起趣意書
 農業・農村をめぐる基本法の改正や、農村を含む地域計画のあり方を示す都市計画法の改正に向けた取り組み、さらには教育基本法など、21世紀社会づくりの基本ともいえる各方面に大きな検討が加えられています。
 戦後の農村は経済成長のはざまで、都市との経済的な競争下に置かれ、結果として過疎となった地域も多くあります。
 しかし、20世紀後半からの地球規模での環境問題。人間の自然回帰指向の高まり、さらにはバブル崩壊以降の人間性回復の指向の中で、にわかに農業・農村がジャンルを越えて評価の高まりを見せてきました。 農業にあってはここ数年、新規の就農者が増加傾向にあったり、農業を生産活動として捉えるのみならず、食文化、生活文化として加工、消費サービス等を一体的に取り組む動きや、現代農業が取りこぼした文化としての農に光が充てられるに至っております。また、農村を休暇の場としてや人間教育の場としてとらえる動き、さらには新らしいライフスタイルを目指した(例えば「ラーバニズム」など)定住の地としてなど、21世紀社会の農村の役割は従来とは違った大きな変化を示唆しています。一方、従来の農村社会も確実に変化をみせ、情報や生活文化の平準化などいまや都市、農村の違いを見出すことが出来ない時代にいたりました。しかし、現状として都市近郊※1(アーバンフリンジ)の農村部における土地利用はその目標において迷走し、環境に日増しに影を落とし始めております。都市近郊農村の多様な有形無形の資源の再評価と、その利活用を目指した振興組織として「(仮称)つくば田園文化センター」を設立したいと発起します。 

 
                 
※1 国土的な農業農村の視点をもつには及ばず、つくば及びその近郊、又は同等の地域   環境を有する所に限定することで、課題の絞り込みをより期することとします。


発起の背景


私達はつくばの田園環境のすぐれた部分に注目し、自らその環境の中に事業所を設け、早10数年の時を刻んできました。
 その間、それぞれ専門とするところに専念してきましたが、一方で交流会を重ね、共通する視点と関心の部分についてプロジェクト形式で活動してまいりました。
 そうした中、つくばそのものの第3発展段階(常磐新線関連)をむかえようとしている今、つくばの将来ビジョンとしてたびたび「田園都市」をキーワードとした検討が重ねられております。イギリスのヘッジワースにおいて田園都市が実現(ハワード博士)し100年になるのを記念し、今年9月日本においても、つくば、神戸を舞台に記念シンポジュームが地元自治体の主催のもとに開かれようとしています(代表世話人/神戸芸術工科大学教授、斉木宗人氏(つくば市総合計画審議委員)、等)。こうした取り組みを通して益々田園都市構想は促進されるものと期待されます。
 ひるがえって、日常のつくば田園を見たとき、農地・農業問題、農村問題は課題山積の状況にあります。今日、都市近郊農村は地域計画行政の中でもあいまいかつ総合的ビジョンが欠落しているのが見て取れます。農業振興はむろん、近代農業が取りこぼした文化としての農業、農村に焦点をあて、ビジョンづくりの一端を担おうとするものです。
 そしてこれらの視点は、横断的かつ民主導の取り組みが不可欠と考えます。目的の性格から主体はNPO法人が整合制が高いと考えております。

法人設立準備事務局
ルーラルカンパニー吉瀬   代表 根本健一